10年生になるわが子は、2学期の最初のエポック授業で「悲劇」に取り組んだ。
このエポック、授業というものの4週間後にはお披露目が控えていて、学内の人だけでなく親類や知人も観劇に来たりするのだから16歳にとって…いや幾つになっても一大事だ。
今年の演目はシェイクスピアの「オセロー」。配役は子どもたちで決めなければならないという。その様子は、出だしから興味深かった。
まず「クラスで配役ミーティングが行われるまでは配役に関してクラスメートとおしゃべりしたり、自分がなりたい役や避けたい役などをクラスメートにほのめかしたりしない」との約束が交わされる。
脚本を読み込んだら、それぞれが自分を含めたクラス全員分の配役を考え、一役ごとにその理由も添えて提出。みんなの意見をすべてテーブルに並べる。
こうしていよいよ、配役決めミーティング、という段となったとき「配役決めミーティングは各家庭にてオンラインミーティングで行うことにしました。各自ネット環境を準備していただけますか」との連絡が先生から入った。クラスメートの一人が、コロナの影響で登校出来なくなったためとのこと。それなら、教室と自宅待機の生徒の家をつなげば良いのでは…。と不思議に思っていたら、クラスメートの全員ができる限り同じ条件下で意見を出し合えるようにするための計らいだという。
おどろいた…。
「この役がしたい」「この役はしたくない」「この役はあなたに」「裏方は誰がしよう」。一人一人がしっかり意志を表現し合った上で最終的に一つにまとまり合う。これは子どもじゃなくても大変力のいる作業だ。でも、達成できればこの上なく重要な学びとなる。役柄を通じて、自分やクラスメートの新たな面に出会ったり、クラス内のパワーバランスに良い変革が生まれるということもある。
先生方は、こうした可能性に本気でかけておられる様なのだ。
こうして配役決めははじまり、生徒たちの悲劇エポックの日々が開幕した。
K.U.
*10年生の悲劇「オセロー」は、9月末に無事上演されました。