地域と共に

 年間3回発行している学校報「プラネッツ」に、地域の方々へのインタビューを紹介する「ひらどつつじ」というコーナーがあります。ひらどつつじは本校がある京田辺市の「市の花」。地域とつながる思いを込め、タイトルにしています。

 私はこのコーナーで5年ほど前から取材を担当しています。これまでに「木津川マラソン」実行委員長の山村武正さん、「みどり農園」園主の村田喜昭さん、「伊賀の里モクモク手づくりファーム」の家城誠さん、「義定刃物」の刀匠・山口悌市朗さん、「酬恩庵」(一休寺)住職の田辺宗一さん、地元の重文旧家「澤井家住宅」を管理する亀村司さん--などにお話を聞きました。子供たちが農業や金属加工の実習、地域学習などでお世話になった方々です。

 インタビューは多くの発見があります。自分たちが暮らす地域についてまだまだ知らないことがたくさんあるのだなと気付かされます。

 今夏の号で紹介したのは、地元にある「酒屋神社」の総代長、村田新之昇さん(81歳)でした。神社の鎮守の森は子供たちの格好の遊び場です。

 本校がある地域は興戸(こうど)という地名。この辺りは平城京と各地域を結んだ官道が通り、古くから人が往来する場所でした。古代に酒を造る技術を持った酒人(さこうど)が移り住み、転じて「こうど」になったといいます。一方、神社には第二次大戦で戦死した人たちの氏名が掲げられ、農村の若者が戦地へ駆り出された歴史の一端を映しています。村田さんはこうしたことを丁寧に教えてくれました。

 木津川左岸に広がる京田辺はベッドタウンとして宅地開発が進んでいますが、今も多くの田畑が残っています。農業は種をまき、丹精込めて世話をして収穫する営み。ただ、何でも店で買える時代になり、人々からそうした営みが遠くなっていると村田さんは心配されていました。本校の子供たちは村田さん宅の近くの田畑で米や野菜を育て、声も掛けていただいています。村田さんに「農業の体験は将来に生きる」と励ましてもらい、心強く思いました。

 本校には4年生で「郷土学」という授業があります。学校周辺の地図をノートに色鮮やかに描いたり、先生やクラスメートと地元の史跡を訪ねたり、名産の茶摘みを体験させていただいたりして学びを深めます。広い世界へ目を向けるその始まりとして、自分たちが暮らす土地の歴史、風土、文化を学ぶのです。これからも地域とのつながりを大切にし、地域に支えていただきながら本校の営みを続けていけたらと思っています。

NS

※学校報「プラネッツ」についてはこちら

酒屋神社.jpg

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