道を歩いていると、
風に乗って運動会の声が聞こえてくる季節になりました。
京田辺シュタイナー学校でも、秋の一日、
生徒、教師、保護者が参加して
みんなでスポーツを楽しむ行事があります。
2003年の高等部開校以来続いている、
高等部の企画・運営によるスポーツフェスタ。
それがどんな風にして始まったのか、2004年発行の
『峻嶺 京田辺シュタイナー学校高等部1年目の歩み』より
ご紹介します。
『夏 6月 ある日・・・
男の子たち数名が、教員室の扉をバンッと開けて、
「もうやってられへんし。」
と叫びました。かなりたまったものがある様子です。
とにかく一度彼らの訴えをゆっくり聞こうと、
教員たちと彼らの話し合いの場が持たれました。
6月26日(木)、教師会へやってきた彼らが挙げた事柄は、
次のようなことでした。
この学校は自分たちが考え出した遊びが、次々と禁止される。
野球もしたいし、サッカーもしたいし、とりあえずボールを蹴りたい。
校庭には何もない。
普通の学校のようないろんな設備もあって欲しい・・・。
何人かの訴えを聞いた後で、
それでは、今一番必要なものは何か? と聞いてみると、
「それは、壁やね。今一番、壁が欲しい。」という答え。
「ボールを蹴ってあてる壁、ボールがぶつかって返ってくる壁が、
普通どんな学校にもあるんですよ。」
確かにこの学校にはそんな壁がないのですが、
そして彼らの本当にささやかな望みに、
思わずほほえんでしまったのですが、それにしても、
「壁が欲しいのだ」とはあまりに象徴的な答えでした。
思春期の子どもたちに対して、
大人がしっかりとした壁になってやらなければならないのだと
言ってきた私たちに、子どもたちは
その手ごたえのなさを訴えているかのようでした。
ただ穏やかに時が過ぎていくことへの
物足りなさを訴えているようにも感じられました。
この若者たちの日々をいかに緊張感のある、
充実したものにしてやれるのか。
それは本当に簡単なことではないことを、
あらためてかみ締める思いでした。
この出来事は、高等部教員チームにとって
シビアな問題提起となり、 気を引き締めて
授業や年間のスケジュールを見直すことになりました。
そしてこの後、彼らのエネルギーは、
ボールをぶつける壁を作るということではなく、
彼らが企画するスポーツ・フェスティバルへと
つながって行くことになります。』
高等部の生徒たちは、
「運動会のないこの学校で、どんな競技をするのか」
「低学年への配慮は」「必要経費と参加費は」など、
さまざまな話し合いを重ねて企画書を作り、
通常は教員と保護者が学校の運営を話し合う場である
運営会議で提案、承認を得ました。
また、昼休みには下の学年の子どもたちを集めて歌ったり、
ゆっくり走ったりしながら競技の指導に大奮闘。
大騒ぎになって収拾がつかなくなる低学年に苦労したり。
そうして、初めてのスポーツ・フェスティバルは開催されました。
今では学校行事となり、今年はどんな競技を考えてくれるのか、
子どもはもちろん親も楽しみにしています。
その様子もまたこのブログでお伝えできたらと思っています。
n*h