クリスマスシーズンになると、街はイルミネーションやクリスマスの飾りで華やかになります。クリスマスに向かう4週間の準備期間のことをアドベントといい、シュタイナー学校ではこの期間を光の季節を静かに待つ時間として大切にしています。アドベント期間の学校や家庭の様子を保護者の視点でお伝えします。
11月に入ると低学年の保護者を中心にアドベントの準備が行われます。蜜蝋でろうそくを作ったり針葉樹でクランツ(リース)を作ったり、針葉樹の香りが漂う中、楽しく会話をしながら手を動かし心を込めて作ります。クランツを作るには針葉樹の束をワイヤーで力強く巻く作業があり、意外と力が必要です。私も初めて作った時はワイヤーを巻くのに苦労しましたが、完成した喜びはひとしお。作り方は毎年下の学年に大切に引き継がれています。出来上がったクランツは各教室に置かれ、アドベントの準備を整えます。
1,2年生は第一アドベントの日にりんごろうそくを行います。りんごろうそくとは、ろうそくのついたりんごを手に持ち針葉樹で作ったうずまき状の道を歩いて行き、うずの中心にあるろうそくから自分のろうそくに火をもらうというもの。簡単な動作にみえますが、これは運動感覚や平衡感覚などさまざまな感覚を使って行うものだそうです。何より暗闇の中を一人で勇気をもって進むという行為が、子どもたちにとって大きな体験です。我が子も初めて体験したときは、緊張しながら歩いていたことが思い出されます。闇の中から自分たちの行為で光が生まれることを経験し、保護者は一人ひとりの姿を見守ります。
アドベントの期間には、一週ごとに各クラスにあるクランツにろうそくが灯されます。子どもたちは一つずつ灯されるろうそくに待つことの喜びを感じます。教員が青色と赤色の服を着ていると、「あ、マリアさまだ!」と言われたというエピソードも。お家ではクリスマスツリーにオーナメントを毎日一つずつ飾る子もいるそうです。我が家もアドベントカレンダーを毎日一つずつめくるのを楽しみにしています。
冬休みに入ると保護者有志によるアダムとエファを描いたパラダイス劇が、そして教員たちによるクリスマス生誕劇が行われます。力のこもった演技に深い感動とあたたかな余韻が残ります。我が子は劇が終わって家に帰ると、衣装を工夫して気に入った役になりきって遊んでいます。なかでも生誕劇のゆかいな羊飼いのやりとりはお気に入りで、羊飼いのセリフを真似して楽しんでいます。
私はアドベントを知るまでは、12月といえば師走の気ぜわしい雰囲気とクリスマスムードのにぎやかな印象がありました。にぎやかな感じも好きだけれど、静かにこの季節を味わう楽しみも、今はとても好きになりました。心静かに光の季節の到来を待つ、皆さまにとってもこの期間が豊かでよい時間になりますように。
(3年保護者)