「メディアのない環境」は親と子への贈り物 メディア

メディアとゆっくり出会うって本当?

本校への編入を検討していた時、シュタイナー教育に関するいろんな噂を聞きました。「シュタイナー学校では〇〇が禁止らしいよ」という内容がいろいろあり、「我が家は大丈夫かな?やっていけるかな?」と不安にもなりました。多くの内容が誤解を含むもので、そうした情報に振り回されてシュタイナーらしい服(?)を急いで買ったことも今では笑い話です。

そんな中で、一定の年齢までテレビやパソコン、スマホ、ゲームなどメディアのない環境を子どものために整えるというのは本当でした。「みんな本当にしているのかな?」と色んな保護者に聞いてみましたが、むしろ、その環境を子どもにプレゼントしたくて本校を選んだ家庭もあるほどでした。

なぜ、メディアとゆっくり出会うの?

メディアとの出会いに慎重な理由はたくさんあり、入学してから学んでみるのも面白いと思います。キーワードをあげると、「想像力」が「創造力」になる、「イメージする力」が「意志」や「思考力」を育てる、受け身ではなく「自分が生み出す喜び」を育てるなどなど。

「一日30分くらいは、いいんじゃない?」と思っていた入学前の私がハッとしたのは、メディアは「子どもの創造性を限定してしまう」ということ。

例えば「シンデレラ」と聞いたときに多くの人が思い浮かべるのはディズニー映画のシンデレラの姿。でも、子どもが自由にイメージするシンデレラや魔法使い、カボチャの馬車は一人ひとり違っているはずです。子どもが自分のなかからイメージをふくらませる前に他の誰かが作ったイメージが刷り込まれてしまう一面がテレビや動画などのメディアにはあります。

既存の情報を組み合わせるだけなら、チャットGPTや生成AIにもできる時代。その子の心の世界を狭めることなく、生き生きとしたイメージが湧き出る子ども時代をプレゼントしてあげたい。それは将来、新しい社会をつくる発想力や創造力につながるのではと思っています。

すでにテレビやスマホを見せているけど、大丈夫?

入学までテレビやスマホをたくさん見ているからといって心配ありません。子どもは、メディアのない生活にすぐに慣れます。必要なのは、親の決意だけです。

刺激が強くて展開の早いテレビや動画に慣れていると、最初は先生のお話が聞けないこともあるようですが、ほとんどの子は半年もしないうちにお話を聞いて自らイメージする力や集中力が戻ってくるそうです。

また、学校で出会う音楽はすべて生演奏です。メディアやマイクを使いませんので、毎日の授業はもちろん、行事の時もピアノやオーケストラ、子どもたちのリコーダーや歌声などの生演奏。オーケストラの楽器の音ひとつひとつを聞き分けられる耳のいい子が多いのは、普段から静かな環境で集中して教員の声や音楽を聞いているからかも?

チャイム代わりの小さな銅の鐘はクラスごとに微妙に音が違い、子どもたちは校庭で遊んでいても自分のクラスの音を聞き分けるそうですよ。

メディアなしの子育て、大変じゃない?

幼いうちはテレビやスマホなしの子育ては正直大変でしたが、逆に小中学生になるとテレビやスマホを与える方が子育ては大変になります。

小中学生の親が子どもを叱る内容の多くは「片づけなさい」「宿題(勉強)しなさい」「いつまで〇〇してるの」の3つではないでしょうか。〇〇に入るのは、子どもを強く引き付けて離さないテレビ、スマホ、ゲームなど。

こうしたものから離れて生活していると子どもを叱ることがグッと減って驚きました。メディアから物欲を刺激されることもないので「〇〇買って」も少ないように思います。

メディアとは、いつ出会うの?

メディアとの出会いは、一人ひとりが一番ふさわしい時期に出会えるよう教員と保護者が相談して決めるのでクラスによって変わります。

目安としては高等部から。高等部ではプログラミング、パソコンによるレポート作成やプレゼンテーションなども行います。

スタートがゆっくりで心配との声も聞いたことがありますが、12年生の卒業プロジェクトでは多くの生徒がパワーポイントを使用して20分のプレゼンをするので心配ないと思います。

テレビやゲームなしで、なにをして遊ぶの?

メディアに時間を奪われることのない子どもたちは本当によく遊びます。低学年のうちは鬼ごっこや水遊びなど体を動かしてたっぷり遊んでいます。

高学年になると、おしゃべりの時間も増えてきます。テレビやゲームなどの話題がないので、鳥が好きな子、宇宙に興味がある子、歴史が好きな子など、一人ひとりが自分の好きなことを話し、それをみんなで聞いている様子は見ていて微笑ましいです。

お互いの世界に影響を受け合いながら「自分」をつくっていく時間がたっぷりある子どもたち。それは、子どもへの最高の贈り物かもしれません。そして、世界にひとつだけの個性が花開く瞬間に立ち会うことができたら、それは親として最高の喜びではないでしょうか。

<7年保護者>


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