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子どもたちが生まれた当時、私たち家族は夫の赴任先である千葉に住んでいました。
その社宅のマンションから歩いていける場所にシュタイナー教育をとりいれた子育てサークルがありました。
子どもたちは季節のわらべうたを歌い、ぬらし絵を楽しみ、木のおもちゃやお散歩に親しみながら育ち、母の私は手しごとをしたり、シュタイナーの学びを少しずつ重ねてゆく日々の中、夫の転勤で奈良に戻ることになったのは、2019年春のこと。長男の小学校入学の年でした。
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長男が通うことになった小学校は、活気があり、先生も熱心な良いところでした。
でも、今から思えば、みんなと一緒のスピードを求められるのが、何ごともゆっくりな長男には少し、しんどかったのかもしれません。
そんな時、千葉のサークルでご一緒だった方が、京田辺シュタイナー学校に行く、と引っ越されたのを思い出し、その年のバザーに遊びに行きました。
「こんな学校に行けたら!」心底、思ったのを覚えています。
その後、出会いの会に参加して、長男のクラスが定員に達しており、編入は望めない状況と知り、やはりご縁がなかったのだと諦めつつも、頂いた願書を捨てられずにいました。
頂いた、そう感じてしまうくらい、その願書は編入の見込みのなかったわが家にとって、かすかな期待を支えるものでした。
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次男が1年生になる前の年の秋、何気なく開いた学校のウェブページに、ずっと募集されていなかった長男の学年の数字を見た瞬間、今しかない、と感じ、即座に願書を書き上げ郵送しました。
肝心の入学の次男の願書は出し忘れ、後日お電話をいただくことになるのですが…。
2021年春、次男は入学から、長男は3年生で、京田辺シュタイナー学校に通うことになりました。
引っ越し、初めての電車通学と、大きく変わった環境に少し不安な様子も見せましたが、通い始めて半年ほど経ったある日、長男が言った言葉は、今もはっきりと覚えています。
「前は、ああ、今日も学校かぁ…と思うこともあった。でも、今はここに立って学校が見えると、今日も学校や!ってなる」
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シュタイナー学校では、入学すると、担任の教員から個々のマークを贈られます。
長男は「亀」でした。岩の上に立ち、まっすぐ前を見つめている亀。
「亀は、私が好きな動物のひとつなんですけど…いろいろと、ゆっくりなひとなのかな、と思ったので」
たった一度の子ども面談で、長男の様子を掴んだ教員の観察眼にも驚きましたが、同時に、ゆっくりでもいいよ、と長男に寄り添うようなその思いはありがたく、嬉しいものでした。
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学びの内容そのものは、絵を描いたり、お話を聞くのが好きな長男には向いているだろうと思っていましたが、対「人」となると、必要な時しか話さず、休み時間は本ばかり読んでいる長男に、クラスのみんなも戸惑っていた様子でした。
でも、クラス全員の大縄跳びで、引っかかってばかりいた長男が跳べた時、「やった!跳べた!」と自分のことのように喜んでくれる子、苦手な笛を繰り返し練習する姿をそっと応援してくれる子、断っても断っても、諦めず外遊びに誘ってくれる子、長男を尊重しながらも、さまざまな形で関わり続けてくれたお友だちのおかげで、長男もそろそろと甲羅から顔を出し、外の景色の素晴らしさに気づいてきたようです。ㅤ
毎朝笑顔でこちらに手を振って登校していく長男と次男の後ろ姿を眺めながら、一度は諦めながらも願書を書くことになり、今ここにいられることへの不思議なご縁を、感じずにはいられないのです。
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≪6年生保護者≫