平和のために私ができることを問うてみたい

平和のために私ができることを問うてみたい

学校報「プラネッツ」99号(2021年3月発行)より

第11期生(2017年度卒業)Aさん

京田辺シュタイナー学校で12年間学ぶ。2年間の宅浪生活を経て、去年、国際基督教大学教養学部アーツ・サイエンス学科に入学。コロナ対策により授業がオンラインで行われるなどの変更はあるものの、充実した大学1年目を過ごしている。

 こんにちは。2018年3月に卒業いたしました11期生のAです。現在は国際基督教大学(ICU)にて1年目の学びを満喫しています。この度は主に、私が京田辺シュタイナー学校を卒業してから現在に至るまでのことを書かせていただきますが、その前にまず自己紹介がてら、シュタイナー学校での日々について少々触れてみたいと思います。

探究の面白さに気づいた卒業プロジェクト

 シュタイナー学校での学びにおいて、私にとって特筆すべきは、卒業プロジェクト(卒プロ)です。卒プロでは、卒業までの1年半自らが選択したテーマに取り組みます。私のテーマは“歩き旅”で、主に四国遍路を歩きました。「マイペースが服を着て歩いている」とも称された私は、自分の力とペースで旅をしてみたかったのです。また、“歩いて”旅をするという、時間・金銭両面において最も非効率な文化が、今日まで脈々と引き継がれていることに興味を持ち、お遍路について知りたいと思ったのでした。卒プロを経て決心したことは、大学進学でした。「知りたい」と何かを探究する魅力に気づき、大学でこのような学びを継続したいと思ったのです。

四国遍路の記録

平和学と総合的な学びを目指す

 進学自体は卒業までに決めたものの、大学選びや受験勉強を始めたのは卒業後でした。学びたい分野は、比較的早い段階で発見することができました。平和学です。「なぜ暴力(※)は社会からなくならないのか。どうすればより平和な社会に近づけるのか」ということに幼いころから興味があり、大学でも是非このテーマを深めたいと思いました。しかし、平和学の他にも学んでみたい分野がありました。文科系・理科系の全分野です。その時点で自身が持っている限られた知識に基づいて専攻を選択することが残念に思われ、卒業プロジェクトでお遍路を体験してみた時のように、学問も実際に大学でいろいろ挑戦してみたいと思ったのです。またそうすることは、包括的な性格を持つ平和学を志す上でも、合理的に思われました。〈平和学〉〈総合的かつ学際的な学び〉〈国公立大学(学費の面から)〉という条件を満たしたのは、広島大学総合科学部でした。広島大学で求められる学力と私の実力には非常に大きな差がありましたが、とにかく挑戦することを決め、受験勉強を開始しました。

「問う」大学へ

 さて、そこから2年間の宅浪生活を経て、私は広島大学ではなく国際基督教大学(ICU)に入学しました。まずなぜ2年間も浪人生だったのかという点についてですが、これは単純に〈高い理想〉と〈マイペース〉の両方を手放さなかったことに起因しています。そして次に、最終的にICUを選択したことに関してですが、こちらは第二志望として受験して惚れ込んでしまったためです。ICUは〈様々な学問に触れる機会〉を重視しており、学生は2年間の一般教育を経て、専攻選択を行います。専攻できる分野には平和研究が含まれており、私立大学であるということ以外は、私の理想に適っていました。私が特に惚れ込んだのは、大学の底流にある理想主義的な思想と、教授陣や大学全体から感じられる柔らかで温かな雰囲気です。これらをより端的に表しているのは、当時の学長の一言かもしれません。「『自分の将来をどうしようか』と問い、ずっと問い続けたいひとを仲間としてぜひ迎えたい」。

迷うことでの再確認

 私が大学生活に期待したことで、また実際に現在行っていることは二つです。一つ目は英語で学術的な活動ができるようになるために学ぶこと。ICUの1年目の多くの時間は、英語での学術的な思考・表現スキルの修得に費やされます。二つ目は、迷うこと。一旦自分の偏見をリセットして迷子になりたいと思ってきましたが、これが叶っています。そして「本当に興味がある分野は何なのか」「座学ばかりで行動が伴っていない」「私の力量で何ができるのか」などと考えて迷うなかで、はっきりしてきたこともあります。それは、やはり平和研究をしたいということです。まだ大学卒業後などについては未定ですが、今はまず「平和のために私は何ができるのか」と問うてみたいと思います。

※暴力とは、紛争・テロなどの≪直接的暴力≫、搾取の上に成り立つ経済システムなどに存在する≪構造的暴力≫のどちらも含みます。


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