教育内容
シュタイナー教育では子どもの成長段階に応じて、子どもの世界を広げながら、必要なものを育てていきます。
メインレッスン(主要教科)はそれぞれのテーマでエポックに分けられ、3~4週間集中的に学びます。学んだ内容は、一人ひとりの「エポックノート」にまとめていきます。それぞれのエポックはつながり合い、専科の授業でも関連する内容が取り上げられ、視野を広げ、また視点を深めることを助けます。
1・2年生では数字を単に覚えるのではなく、具体的なイメージと共に質を体験していきます。四則計算、九九、分数などを学び始めるときは、エポック授業でゆっくり時間をかけて深め、学んだ後は演習を繰り返します。12年間を通して、正解を出すための算数、数学ではなく、答えを求める過程の思考力を鍛え、数学的世界の理解を深めることを目指します。
1年生では、人間が字を生みだした過程を体験するように文字を学び始めます。学年が進みながら、お話を聴く、黒板に描かれたものを写すという段階を経て、徐々に自分で創作する範囲が増えていきます。高等部では自分のことばで全ての教科のノートを構成し、仕上げます。
自分と世界との間に距離を感じる9歳(3年生)の時期に、人間が地に足をつけて生きていく営みの原体験をします。米を作る、羊の毛刈をして羊毛から糸を紡ぐ、家を建てるなど、自分の手を使って生活に必要なものを作り出します。また、その過程で生活に密接な関わりのある量や長さの単位を学びます。4年生以降、様々に分化していくエポックの出発点ともなります。
4年生の動物学から独立したエポックとして始まり、5年植物学、6年鉱物学、7年物理学、天文学、化学、人間学など分野ごとに集中して学びます。8年生ではこれらの要素をまとめた学びとして気象学があります。その後、高等部ではさらに、実験、実習などを交え、「環境」を中心に据えた自然科学分野全般の学びに発展します。
地理は、4年生で京田辺近郊の地形や文化を学ぶ郷土学から始まり、5年生で日本地理、6年生からは世界地理が加わります。歴史は、4年生では身近な神話や伝承に触れ、5年生から史実としての学びが始まります。子どもの内面的な成長は人類の歴史を写すという考えから、その時代に生きた人々をイメージし、各時代の特徴的な出来事をとらえ、現代に生きる「私」までの道のりを追っていきます。
オイリュトミーとは、ことばや音楽の音の響きを体で表現する芸術です。また、様々なかたちを空間の中で共に動き合うことによって、お互いの関連性を見出していく助けにもなります。子どもの内面の変化や深まりに沿った内容を行うことで、子どもの成長を助けます。
低学年では手に優しい感触の羊毛や毛糸で作品を作りはじめ、高学年になるにつれ、次第に木や金属など固い素材を扱うようになります。作品は、その時期に学んでいるエポック授業に関連したものや生活に密着したもので、目標をもって手仕事に取り組むことで、集中力や注意力、構成力などが養われていきます。カリキュラムは子どもが成長していく過程を意識して組まれ、12年間の手仕事を通じて、文化として受け継がれてきた様々な技術を身につけ、よく働く、しなやかな手を育てていきます。
1・2年生では伝承遊びが中心です。一般的な体操の運動は3年生頃から始まります。様々なゲーム、ボールを使った運動、床での運動などに取り組んでいき、競争を伴った競技は6年生頃から行います。子どもたちは授業を通して個人差があることを理解し、お互いの個性を尊重すること、助け合うことなど、社会性・協調性を学んでいきます。
低学年では歌やゲームを通じ、模倣によって学びます。その後も、学年に適した教材を選び、抵抗感を持たずに英語に向かえるような授業が工夫されています。7・8年生で文法を整理し、高等部ではエッセイや小説、ニュースなどを題材にした授業を行い、その他に文法や読解力のための時間を設けています。12年間の英語を通して、異なる文化を理解し、世界に対する関心を深めることを目的としています。
1年生から第二外国語として中国語を学んでいます。ネイティブスピーカーの教員による授業で、中国の文化や風習にも触れていきます。
1年生では単声の歌と木のリコーダーの演奏をします。次第に合唱や楽器のアンサンブルへと発展していき、6年生からはクラスオーケストラを編成し、合奏に取り組みます。歌や楽器演奏は音楽の授業以外にも、メインレッスンを始め、あらゆる授業の中に織り込まれています。
3年生の生活科のエポックで1年間をかけて米作りを経験した後、6年生からは授業として畑仕事を学びます。様々な作物に触れ、8年生では小さな自分の畑を持って1年を通して作付から収穫まで自分で管理します。高等部ではPKEで学外の農園に出かけ、果樹の世話などを行います。
静かに墨をすり、背筋を伸ばして紙にまっすぐに向かう時間は、子どもたちにとって大切なものになっています。毛筆の様々な学びの中で、生きた動きや流れ、呼吸などの感覚を体得していきます。
高等部から始まる実践的・芸術的活動の時間です。低学年から取り組んできた手仕事や木工よりも専門的・文化的な内容(和裁、織物、表装、家具作りなど)や、絵画、彫塑、陶芸、園芸、金属加工(鉄打ち、銅打ち、銀細工)などを行います。また、測量、福祉、労働などの体験実習も学年ごとに組み込まれています。どの取り組みも手足を通し、体で体験すること、文化として営まれてきた技術を得ること、その分野に生きる人々の熱い想いに触れることなどを大切にしています。