お蚕さん

前回ご案内しました12年生卒業演劇は
おかげさまで無事二日間の公演を終了いたしました。
ご来場くださった皆さま、
公演に際しさまざまにお力添えくださった皆さま、
本当にありがとうございました。

さて、今回は夏休みよりも少し前の話題をお届けします。



週末のある日、4年生の娘が紙箱を大事そうに持って、
学校から帰宅しました。
兄弟たちが興味津々で近寄っていくと、
「お蚕さんの当番になってん。
お蚕さんはお日さまの光が苦手やねんて。」
と言いながら、そっとふたを開けました。
中にはたくさんの桑の葉と、
元気に動く小さな蚕たちがいました。

お蚕さんの当番は、学校が休みの週末に蚕を家に持ち帰り、
1日2回桑の葉を与えるお世話をします。
農薬のかかった葉を食べると蚕は死んでしまうのだそうで、
自然のままに植えられている学校の桑の木の葉は、
蚕にとってとても貴重な餌になっています。
紙箱に顔を近づけて耳を澄ますと、
蚕たちが一生懸命に葉を食べる
「カサコソ、カサコソ」という音が聞こえました。

なぜ4年生で蚕を育てるのか、先生の説明によると、
4年生で学ぶ「郷土学」の一環なのだそうです。
京田辺は日本における養蚕の起源の地といわれており、
「古事記」にもその逸話が書かれているとのことです。
「古事記」も同じく4年生で学びます。
古代のロマンと自分たちの地域、そして蚕の飼育が、
一見無関係な事柄に見えながらも、
時間と空間でつながっていくような学びの面白さを感じました。

蚕たちが滞在中、
ちょうど我が家を訪ねてきたおじいちゃんが、
懐かしそうに孫たちに話してくれました。
「お、蚕かあ。じいちゃんの家でも昔はいっぱい飼いよったよ。
蚕の部屋があってなあ。
葉っぱを食べる音はこんなんじゃなくて、
もっとすごい音がしよった。
大きい金網に蚕たちと桑の葉を枝ごとのせてな、
上下を挟んでひっくり返すと、フンだけが下に落ちるんよ。
蚕はお日さんの光にも弱いけど、匂いにも弱くてなあ。
じいちゃんの兄ちゃんが、
頭にポマード(整髪料)をつけて帰ってきたら、その匂いで、
かわいそうに蚕たちが全滅してしまったことがあってなあ。
その兄ちゃんももうこの世におらんけど、思い出すなあ…。」

子供たちは教室で蚕を飼うことと、
養蚕でたくさんの蚕を飼うことのさまざまな違いにも
関心を持ちながら、話に聞き入っていました。
お蚕さんが、おじいちゃんの記憶と孫の学びをも
つないでくれたように感じました。

Y+T

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