測量実習~体験実習③~

まだまだ寒さは厳しいですが、
立春を迎え暦の上では春が訪れています。

昨年12月の記事で高等部の福祉体験実習をお送りしました。
少し間があきましたが、体験実習シリーズ第3弾をお送りいたします。


まだ卒業演劇など一面でしか高等部をイメージできない
低学年保護者の私には、高等部で行う実習の中で、
農業実習や労働体験実習などとは少し異質な感じを受けるのが
測量実習です。しかし、ほとんどのシュタイナー学校では、
測量実習が10年生の授業に組み込まれており、
学校によっては2週間にわたって実習を行うところもあるそうです。
本校でも10年生の9月にこの実習が行われます。
なぜ「測量」でなぜこの学年なのでしょう?
毎年本校で測量実習を担当している先生の文章をご紹介します。

『最後に、なぜシュタイナー学校で「測量」を行うのかを考えてみます。
私自身は、その問いに対する答えは決して一つではなく、
様々な意味があると思っていますが、とりあえずその中の
3つ挙げてみますと、
第1に、数学で学ぶ三角比を単なる机上の知識にするのではなく、
それが現実にどう応用されているのか、実際の体験を通して学ぶこと。
第2に、社会に出て行く時のために、見通しの効かない
ブラックボックスをできるだけ少なくすること。そして、
第3に、「責任」というものを自分自身の活動の結果を通して学ぶこと、
です。
ここでは3番目について少し書きくわえておきます。
第3・七年期に入った生徒たちは、徐々に自分で考え、
自分自身で判断し行動することを学んでいかなくてはなりません。
ただ、自分の判断で行動するといっても何でも好き放題にすればいい
という訳にはいきませんから、大人の側からいろいろ注意したり
導いたりすることが必要です。しかし、いくら言葉を重ねても、
往々にして生徒たちは納得しません。実際このくらいの年齢になると、
先生や親の言う通りに行動するどころか、
「あなたの言うことだからこそ、やりたくないのだ」などと
言い出すことにもなりかねません。そんなとき、測量のように
自分の行動の結果がきちんと自分に帰ってくるという経験は
とても大切だと考えます。
この他、エポック終了後に提出された生徒たちの感想には、
測量を通して学んだこととして「チームワークの大切さ」を挙げた生徒が
多かったことを付け加えておきます。』
 (学校報「プラネッツ」64号『「測量」エポックについて』より抜粋)

この年の測量実習は、身近な道具で自分たちの教室を
測量するところから始まり、近隣の公共施設周辺で
測量機器を使う練習をし、最終的には農園に泊まり込んでの実習で、
田んぼを測量したり、付近の山と農園の敷地の高低差を
測ったりしたそうです。使用するのは敢えて旧式の測量機器。

中学の頃から理数系、特に数学を大の苦手としてきた身には、
そこに並ぶ図形や専門用語(?)を見ても
「何をどうするんだかよくわからない」と思ってしまう作業内容です
(もしや、これが、ブラックボックスを減らせないまま
社会に出た大人の例!?)。

たぶん生徒たち自身は、「なぜ今、測量の技術を学ぶのか。
その意図は?」などということは考えず、
ひたすら、仲間と協力し合ってより正確なデータを得て
測量図を完成させることに没頭するのかもしれません。
そんな風に目の前の課題と向き合えること、
そのこと一つだけでも、これからの彼らにとって
大きな力になるのだろうなと感じます。

n*h

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