クリスマスのプレゼント

娘が2年生の時のこと。ショーウィンドウのサンタクロースに向かって「サンタさん、天使の羽根をください。」と話しかけていることがありました。
本校では例年、クリスマスの少し前に、教員による生誕劇があります。その年の担任の先生の役は天使でしたので、「あの羽根のことだな」とすぐに察しがつきました。とはいえ、劇の天使の羽根のような素敵なものを、我が家の担当のサンタさんが、数日で作るのは到底不可能です。サンタさんが苦肉の作で用意したのは、白いシルクの布一枚。娘ががっかりするのでは?との夫と私の不安はよそに、プレゼントの包みを開けた娘は、「わぁっ、こんな羽根が欲しかったんだぁ!」と、さっそく布をまとい、劇のシーンを再現しはじめました。ホッと胸をなでおろしつつ、「布一枚で、こんなに喜べるのって、なんだかいいなぁ。子どもの遊びに必要なものって、本当にシンプルなものを少しだけでいいものなんだ…。」と改めて感じたものです。

 翌年からは、娘へのクリスマスプレゼントは、サンタさんがいいと思ったものが贈られることになりました。おそらく、サンタさんも、もうこれ以上の難題が出されては困ると思ったのでしょう。我が家の担当のサンタさんは、ちょっぴり手抜き気味のようです。でも、その提案を試し始めてみると、なかなかいい具合です。それまでは、クリスマスが近づくにつれて、あれこれと必死で欲しい物をひねりだそうと、落ち着かない様子だった娘が、一転して「サンタさんは自分にぴったりのものを選んでくれる。」と、満ち足りた気持ちで、ゆったりとクリスマスまでの日々を過ごせるようになったのです。
思わぬ娘の変化に「低学年までは子ども自身に選ばせるのでなく、大人がふさわしいと思ったものを用意するのが望ましい」と幼稚園や学校の先生方から何度となく聞いていた言葉が、自分の中に深く根を張ったように感じました。

 あどけなかった娘も6年生となり、思春期らしい言動も増えてきました。もう我が家に天使は来ないだろうと思っていましたが、ろうそくの灯りに誘われて、今年も天使が舞い降りました。背中の羽根は、伸びた背丈の分だけ、ずいぶんと小さくなっていて、笑いを隠すのに一苦労しました。でもそんな羽根を見て、子どもの成長と、それには足元にも及ばないけれど、親も共に学ばせて貰っていることへの感謝を感じました。
C.T

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