12年生は、6月末にある卒業演劇本番に向かって、練習と準備の日々を送っています。
京田辺シュタイナー学校の卒業演劇では、それぞれの役柄の他に、舞台美術、音響、演出、台本、こういった演劇を構成する係も生徒たちで担い、劇を作り上げてゆきます。劇の稽古の他に係グループごとの作業もあり、生活は演劇一色になっています。日中はあっという間に過ぎてゆくようで、お弁当を残す日も増えています。それは食いしん坊の息子にはいまだかつてなかったことで、日中の余裕のなさが察せられます。
あまり食べずに日中過ごしていますので帰宅するとお腹はペコペコ、黙々と夕飯を食べて、ようやく一息つくと、ぽつりぽつりとその日のことを少しだけ話します。
「あと3日で、あと数十着衣装作るから、(裁縫が下手な)僕なんかでも縫うのを手伝うんだよ」と、息子の言葉からは、皆で精一杯取り組んでいる状況が伝わってきます。でも、聞いていて気になったことをちょっと尋ねると、とたんに不機嫌になり口をつぐみ、会話のキャッチボールはできません。演劇について母親とは話したくないというのがありありで、息子のつぶやきを、ただただ聞いているのみです。
めずらしく、息子が嬉しそうに話すことがありました。
「ひげをね、伸ばすように、って言われたんだよ。一度、伸ばしてみたかったんだ~」と、無精ひげ宣言です。
また、担当している音楽のことでは、「なんでもないときに、クラスメートが鼻歌で口ずさんでいる、その曲を自分が作ったんだと思うと嬉しい」と、この演劇での曲はケルト文化を参考にしていることなどを楽しそうに話し、ホッとしました。
先日、卒業演劇前最後の、クラス保護者が集まる学年会があり、演技指導講師と演劇担当教員から話を聞きました。演劇に取り組むということはとても大変なことのようです。12年生の子どもたちは大きなことを体験しているということがよくわかり、息子が不機嫌に見え、食欲が落ちている理由も理解できました。
12年生での学びの成果は親には見えにくく、深く自己と向き合い体現してゆく中で得てゆくとても高度なものを求められている、と私は感じています。今、母親にできることはあまりありません。しっかりやりなさいよ、と、心の中で応援しています。
T.S.
※2019年度12年生卒業演劇の詳細
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