りんごろうそく

 12月に入り、街はクリスマスの光や音楽に満ちています。
 クリスマス前の約4週間はアドヴェント(待降節)と呼ばれますが、京田辺シュタイナー学校では、その初日である日曜の日没後に1、2年生が「アドヴェントの庭」という行事を行います。

 「生命(いのち」の蝋燭」を中央に置き、樅や檜葉など常緑樹の枝によって螺旋状にかたどられた道。ライアーのひそやかな音が響く中、子どもたちが一人ずつ、蝋燭を立てた林檎を持って螺旋を入り、中央の蝋燭から光を取ります。向きを変えて戻る途中、星型の印がある場所に、灯のついた「りんごろうそく」を置き、螺旋を出てまた元の席に着きます。
 はじめ、生命の蝋燭の他に数本の蝋燭が灯っているだけのホールはほとんど真っ暗で、子どもたちも緊張していますが、一人また一人と進んで行くうちに、螺旋の道にぽつぽつと置かれたりんごろうそくがやさしく光り、皆の心も暖められるように感じます。幼い足取りながらも厳粛な面持ちで歩く子どもと、少しずつ増えてゆく螺旋の光はとても幻想的です。

 クリスマスという宗教的な行事に関連づけられてはいますが、シュタイナー教育独特のこの行事には、子どもたちへの教育的な配慮が込められています。
 暗闇の中で感覚は自ずと研ぎ澄まされ、光、音、蝋燭や枝の香り、つるつる紅くずっしりと手に収まる林檎、そして歩む自分自身の身体を深く感じます。
 また、第1七年期(0歳~7歳)を終えて、自分の中で闇と光がせめぎ合うように感じはじめる1、2年生の時に、自分の行為によって闇の中に光を増やしてゆくというシンプルな経験は、これから少しずつ向かっていく世界に自分が主体的に関わっていくための原体験となるのではないでしょうか。
 地上へ降りてくる誕生の道を象徴している、とも言われる螺旋を通るとき、子どもは普段と違ったその子の本質のような姿を見せることがあります。クラスごとに行われるこの行事で、暗闇のなかに友達の新しい姿を発見し、その歩みを見守り、戻ってきたことを喜ぶひと時を持ったことで、クラスの絆がさらに強まったように思います。

 冬至を前に暗闇の極まるこの季節、燦々と輝くイルミネーションに心躍らせることもありますが、闇を打ち破る蝋燭の小さな光にも心を向けたいと思います。

参考:纐纈好子「アドベントのはじまり りんごローソクって何だろう」(学校報『プラネッツ』第56号、2007年12月)

Y.T.

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