夏休み中の暑い日に、鉄打ちの体験実習がありました。
鉄打ちの職人さんの工房に行って、職人さんの指導のもと、鉄を打って小刀をつくるという体験の授業です。
もともと息子は肥後守(折りたたみの小ナイフ)がお気に入りで、鉛筆の削りも家での工作でも、木の皮をはぐのにも、すべてその小さな肥後守と彫刻刀を使っていました。
鉄のよく切れる小刀というのはあこがれで、6年生で始まった木工作品でも、自分が将来使いたい小刀のカタチにつくるほどでした。
最近はレリーフや木彫を家でもしたくなり、小さな肥後守では物足りなくなってきていて、少しでも切れるようにと、ときどき砥石で肥後守を研いでいました。ついでに台所の包丁も研いで、「やっぱり、ステンレス包丁より、鉄の方が研ぎやすいな、今度買うならステンレスナイフより鉄のナイフがいいな」とつぶやいていました。
9年生の夏休みになって、そんな息子のあこがれ【鉄の本物のナイフ】を自分で作って、手にする日がやってきました。
私はといえば、鉄打ちをすることはわかっていましたが、その【鉄打ち】と、息子が欲しがっていた【鉄の小刀】が結びついてはいませんでした。いずれ鉄の小刀は買うことになるだろうと思い、まさか作ってくるとは考えていませんでした。
鉄打ち実習があった日の夜、息子が「ほらみて」と、その日の作品を大事そうに取り出し、そっと開くと、中から鈍い銀とピカピカの刃先の鉄の小刀が現れ、大変びっくりしました。
息子は、「手のにぎりがカーブになっていてもちやすいんだよ。両刃なんだよ。めちゃくちゃ研いだよ。すごく切れるよ。」と、興奮して話します。
指先は細かい傷と絆創膏で、奮闘したことが見て取れます。
「僕は使いやすさと実用性重視なんだけどね、取っ手の部分が魚のカタチになってたり、曲がってたりとか、みんないろんなの作ってた」「電動の砥石ってすごいんだ、後ろに鍾乳石みたいに研いだあとのものがたまっててね,,,,,」と、職人さんの工房での感動をつぎつぎと話す息子。
欲しかった【鉄の本物のナイフ】を自分でカタチ作ってゆくプロセスの感動と、これから使って行く未来にわくわくしている息子の様子に、体験から学ぶということはこういうことかと思いました。
※鉄打ちは、高等部の実戦的芸術活動(PKE)の一つです。
PKEは、文化的な芸術、技術を、その分野に生きる人から直接学び、身体で知る、体験実習です。詳しくは
ホームページをご覧ください。
T.S.