家づくりの日々 3年生の生活科   |

3年生の家づくりのエポックでは、校庭の隅に小さな家をつくります。息子たちのクラスは、モンゴルの遊牧民のゲルやイヌイットのイグルー、日本のかやぶき屋根の家など、世界のさまざまな家のお話を聞くことから始まり、どんな家をつくりたいか話し合いました。「日本の木や土を生かした、ゆったりとできる家をつくりたい」。そんなイメージにまとまっていったようです。

親方に教わる

家を建てるために割り当てられた「敷地」は、例年とは異なり、校庭から少し離れたところにある運動場の脇。竹やぶに隣り合っていて薄暗く、人があまり踏み入らない所なので、少しがっかりした子もいたようです。しかし我が家にとっては、偶然ですがうれしいことでした。というのも、そこは私たちの住む家のすぐ近くで、家づくりの様子を日々、間近に見ることができる場所だったからです。

息子はもともと力仕事が大好き。砂場では水路を作る「工事」に夢中で全身砂まみれ、山辺の神社では木の枝を集めて基地づくりに励むといった遊び方をしてきました。10月に家づくりが始まるとそれはもう楽しそうに、「大工の道具って動物の名前がついてるんやで。ネコとかトラとか。親方に教わった」「今日は初めてノコギリを引いた。まっすぐに切れた」「明日は柱を立てる」などと毎日話してくれます。「親方」は家づくりを教えてくれる大工の先生のことです。

「心組み」を学ぶ

私はときどき、自宅からそっと家づくりを見ました。皆で「せーの!」と息を合わせる声、親方が「ちょっと待った」と注意する声、子どもたちがお互いを呼ぶ声、呼ばれたら機敏に集まる姿、柱を皆で支える姿。活気あふれる様子を垣間見るのはとても楽しいことでした。後日担任の先生に聞けば、クラスの皆がいつも真剣に家づくりに取り組めているわけではなく、親方や先生が注意したり、叱ったりする場面もあったとのこと。そういう場面も含め、家づくりを通して子どもたちは、集中すべきときに集中すること、友達と力を合わせることを学んでいったということでした。子どもたちが学んだ「仲間と心を合わせて働くこと」、それを「心組み」というのだと、2学期が終わった後に息子が持ち帰った家づくりのエポックノートを見て知りました。

秋の風景のなかの家

実は、家づくりのエポックの最後の1週間、息子はインフルエンザにかかってしまい、仕上げの工程に参加することができませんでした。熱はすぐに下がったものの自宅から出ることができないため、2階の窓から家づくりを見ていました。気づいたクラスの子たちが「おーい大丈夫かー」「お大事にねー」と手を振ってくれたりします。家づくりの最後には、一人一人が親方への感謝の言葉をカードに書いて渡したのですが、息子は自宅の窓からのスケッチをもとに、3年生の家の絵を描きました。秋の風景のなかにすっきりと立つ、温かみのある家の絵でした。

手が働くということ

家づくりを見ていて気がついたことがあります。それは、薄暗くさびしげだった場所の雰囲気がみるみるうちに変わっていったことです。子どもたちが日々通い、働くことによって土地の気が変わるというのか、そこは日が入って明るく、もともと立っていた柿の木の実も美しく映え、生き生きとした場所に変わりました。子どもたちはそんなことはまったく意識しておらず、無心に体を動かしただけかもしれません。が、無意識であれ、自分たちの手がその場所を変えていったという体験は、こののち子どもたちが生きていくうえで大切な力になるのではないか。そんな気がしています。息子たちがつくった木造平屋に土壁のゆったりとしたその家は、今は初夏の光のなか、静かに立っています。

≪4年生保護者≫

*エポック授業・・・1つの課題を、連続して3~4週間メインレッスンとして集中して学ぶ。学んだ内容は、一人ひとりの「エポックノート」にまとめていく。



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