親と教師でつくる本校。保護者は様々な役割を分担してクラスを支えます。中でもクラス行事をサポートする行事係は、行事に向かう子どもたちの様子を近くで見ることができます。
6年生の行事係の仕事は秋祭りの和太鼓のサポート。練習会場の予約や太鼓の運搬車の調整などをします。私は6年生で初めて行事係になりました。
ある日、子どもたちの和太鼓の練習を聞いていると、急に鬼気迫る音が聞こえてきてゾクッとしました。それまでの演奏とはまったくの別もの。あとで聞くと、その日は先生が三宅太鼓の由来を話してくれたそう。
楽しい祭り太鼓とは雰囲気がちがう佐渡島の三宅太鼓。佐渡島には、無実の罪などで島に流された流人が多く住んでいました。そうした人たちの怒り、悔しさ、やるせない悲しみ、そうした気持ちが三宅太鼓には詰まっている。その話を聞いた直後の演奏は、子どもたち自身が驚くほど気迫に満ちた演奏でした。
何を込めるかで音は変わる。「打つのではなく、打ち込む!」と練習を重ねてきた和太鼓に命が通った瞬間でした。
6年生は夏の終わりから和太鼓に取り組み、10回ほどの練習で本番の秋祭りを迎えます。初めてバチを持ち、手のひらにマメができる経験も初めての子どもたち。毎日の筋トレや素打ちで筋肉がつき、目に見えて体つきや表情が変わってきます。
体幹がしっかりすると姿勢もよくなり、授業中の集中力も高まります。太鼓を打つときの腰もどんどん低く落ちてきます。腰が落ちると手足が伸び「まるでワシが翼を広げるよう」と担任は表現していました。
忍耐力やがんばる力、精神力もつくため、意志の力と思春期独特の重みをしっかり支える筋力とが育まれる和太鼓の活動は6年生にぴったりの活動だそうです。
2年前のメイポールダンスで花冠と真っ白な衣装でスキップしていた子たちが、6年生の和太鼓では真っ黒な衣装に身を包みます。
身体が重く感じられて「だるい」と言い始める年齢の子どもたちが、誰一人手を抜くことなく和太鼓に向かいます。たいへんな難曲で、一人でも手を抜くと成り立たないのが三宅太鼓なのです。
オープニングは、一番太鼓の二人が対になって打ちます。ゆっくりのテンポで音を合わせるのはとても難しく、ものすごい集中力でお互いの目を見て呼吸を合わせながら打つ様子に見ている方も思わず息をのみます。
一番の難所は「やまびこ」と呼ばれ、二人ずつ順々に打ちながらどんどんリズムを速めます。集中してタイミングよく打つことはもちろんですが、クラスに背中をむけている子たちはどこまで順番が回ったか分からないため、対になる子と目を合わせて相手を信じて打ちます。
それでもタイミングがずれていくため、「やまびこ」の次の難所「早打ち」に入る直前に6番太鼓がリズムを整えて1番太鼓に音を送るのもフィナーレ成功の要です。
フィナーレの「早打ち」は、早すぎるとついてこられない子が出てくるため、全員が確実に打てる速度でどんどん速めていき、全員で打つ最後の一打がきれいに揃えば演奏終了。
すでに何度も聞いているのに低学年の子たちは一番前で食い入るように見つめます。「早く6年生になって太鼓が打ちたい!」と気の早い子も。
和太鼓が終わって1か月経っても、太鼓効果は続いていました。
信頼、責任、決意。仲間を信じて、責任を担い、強い決意で一打を打ち込む。それに真摯に取り組んだクラスの結束は、ますます強くなっていました。
また、体が整えられているので、新しい挑戦に対してもフットワークが軽い。「やってみよう!」と軽やかに動いて生き生きしている。
「体が動けば物事が変わる」という実感は、難しいことがあっても「自分が動けば変えられる」という自信、ひいては「未来も変えていける」と行動できる基礎となるそうです。
その年齢にふさわしい働きかけをするシュタイナー教育の取り組みがよく見える和太鼓の学び。
2024年度の秋祭りは10月19日(土)開催です。ぜひ、今年の6年生の和太鼓を見にいらしてください。
<7年保護者>