我が子を育てるうえで大切なことってなんだろう。本屋や図書館に行けばいろんな教育にまつわる本があって、いろんな教育法があります。みんなそれぞれ良さそうだけど何を指針にしたらよいか分からない・・・。娘が小さい頃、よくそんなことを思っていました。多忙な子育て世代、たくさん本を読む時間もなかなかとれない。でも子育てするうえで軸になるような考え方があればいいな。いつもそんなことを思っていました。シュタイナー教育って何だろう?私がしたい子育てって?もしそんな風に思われる方がいたら、こんな本はいかがでしょうか。
この本は、小学校教員である主人公がシュタイナー学校へ見学に行ったことをきっかけにシュタイナー教育を深く学んでいく物語です。神奈川県にあるシュタイナー学園の協力を得て作られた本でマンガと文章で構成されており、物語と関連づけながら読者の目線に立ってわかりやすくシュタイナー教育やシュタイナー学校について学べるようになっています。独自の科目があったり、8年間一貫担任制やクラス替えのないことはシュタイナー学校の大きな特徴です。それにはどのような意味があるのか、シュタイナー学校の詳しい説明が文章だけでなく図表や写真からもわかりやすく知ることができます。忙しい方はまずはマンガの部分だけ読んでみてもよいかもしれません。著者である井藤元さんは本校の卒業プロジェクト発表会で外部評価委員をして下さったことがある方です。発表会では生徒たちの発表に関心を持って聞かれ、温かいコメントを下さいました。
本書にはシュタイナー学校のことだけでなくシュタイナー教育の家庭での取り組みの紹介もあり、子育てのヒントとして読んでも面白いです。特に幼児期の子育てで大切にすることが書かれています。生活のリズムを大事にすること、どんな遊びがよいのか、住環境の工夫など。物語の中には保育園に行きたくない我が子と向き合う場面があります。子育てをしてたら「わかる~」というエピソードですね。主人公が子どものことを考え真摯に向き合っている姿は共感できますし、子どもを中心にした生活をするべく、家族も生活のリズムを見直していく様子が描かれています。私自身、子どもが本校に入学するまでシュタイナー教育のことはほとんど知りませんでした。もうちょっと早く出会えたらよかったなと今さらながら思います。
物語では主人公がシュタイナー教育を熱心に実践する中、パートナーから「あえて聞くけど…シュタイナー教育にのめり込みすぎてるってことはないかな?」という問いが投げかけられます。メディアとの向き合い方など子どもの教育について互いの意見を述べる場面が印象的でした。
世間の流れと逆行しているような教育。シュタイナー学校では子どもがふさわしい時期になるまでメディアと距離を置いたり、低学年では文字や算数を教員が語るお話の中から時間をかけて学び、教育内容もゆっくりな印象です。シュタイナー教育がなぜこのようなことに重きを置くのか本書の中でもくわしく書かれています。私も最初はメディアをあえて遠ざけることは今の社会と逆行しているようだなと感じていました。しかしシュタイナー教育を学ぶにつれ、また日々の子どもの様子をみてなるほどと自分の中で腑に落ちました。子どもの発達の段階によって出会うタイミングがあるのです。
本を読んでみて興味を持たれたら、実際にシュタイナー教育を実践しているところへ足を運ぶことをお勧めします。この本でも主人公がシュタイナー学校へ見学に行くところから物語は始まります。実際に体験することでシュタイナー教育の輪郭がよりくっきりと見えてくると思います。
本校でも定期的に行われる学校見学会があり、校舎や教室の中を見ていただけます。また、講演会やオンライン講座、幼児向けの会もありますよ。直に体験してみると、きっと何か感じていただけると思います。