ある日のこと、息子に読み聞かせていた本の中に「クラス替え」の場面がでてきたので、「クラス替えって分かる?してみたいって思ったことある?」と聞いてみました。すると「んー?ずっと同じなのが普通やから、考えたこともないなぁ。」との返事が返ってきました。
本校では各学年は1クラスずつです。編入などで新しいクラスメイトと出逢うことはありますが基本的には12年生までずっと同じメンバーで、1年生から8年生までは担任も同じという環境で学びます。しかし息子のように、そのことを不満に思う子どもはあまりいないような印象を受けます。
その理由の一つとして、本校では行事や遊びの中で他の学年の人とも仲良くなれる機会が多くある、ということがあげられるかと思います。息子にも上級生・下級生に友だちがいます。他学年の人とも遊んだり、困りごとがあった時には助けてもらったりという話なども聞かれるので、人間関係は親の予想以上に広々としているのかも知れません。
クラス内でいつも同じ担任教員に見守られながら同じメンバーと過ごす。そのことは子どもの安心感につながる一方で
「12年生まであるけど、クラスの友達と上手くやっていけるのかな?」
「何か問題が起こった時に、ずっと同じメンバーだということが苦しくなってしまうことはないのかな?」
など、不安に感じられる保護者の方やお子さんもいらっしゃるのではないでしょうか?確かにクラス替えがあったら、心機一転新しいメンバーと仲良くなれるかも知れないし、苦手なクラスメイトがいたとしても離れられるかも知れません。「1クラスしかないけど大丈夫かな?」と、我が家でも話し合ったのを覚えています。
現在4年生の息子を通わせている我が家の現状はというと、もちろん毎日がスムーズで平和!なわけもなく、日々クラス内でのちょっとした小競り合いや、親としてため息がこぼれるような出来ごと、眉間にシワが刻まれるようなことなども起こるわけです。担任からの電話で耳の痛い報告を受けることもあり、学校での我が子にしっかりと向き合ってもらえていることに深く感謝すると共に、申し訳ないやら息子に腹が立ってしまうやらで、親としてのあり方を反省して凹むこともあります。
また、時には「〇〇君がイヤ!きらいやねん。」「今日は学校に行きたくない…」なんて言葉が聞かれると胸がギュッとする日もあります。
ケンカやもめごとがある度に子ども同士、または教員も交えて話し合いが持たれます。
時には解決に時間がかかることもあり、子どもの曇った表情に親としてはヤキモキすることもありますが、少しずつ、自分とは異なる考え方を学び、受け入れ合っていくようすが見受けられます。
そして「〇〇くんと何回か話し合って、仲直りできてん!あの時は腹がたったけどぼくも良くないとこがあったって分かった。お互いに謝ったから今はもうめっちゃ遊んでるで!」というような報告を聞けると親としてはやっとホッと一息つける気がします。子どもたちがケンカやもめごとという経験を積ませてもらえることもありがたいことなんですけどね〜。
また、その周りの子どもたちにとっても「クラスメイトを見て学ぶこと」や「信じて待つ力」が育っているのだとか。当事者だけでなく周りの子どもたちにとっても大切な経験となっているという考え方に共感するとともに、学びあえる環境に感謝しています。
そんな体験を通じて育まれた「相手を理解しようとする力」や「自分を受け入れてもらえる安心感」は子どもの奥深くに蓄えられていき、いつの日にかこの世界への大きな信頼や自己肯定感につながっていく。卒業演劇や学校行事のたびに、それを体現している子どもたちの姿に感動するとともに励まされます。
子ども同士のトラブルが少し長引き私が悩んでいた時に、クラス保護者からかけてもらった言葉があります。
「問題が起きた時は学び時。子どもとその家族にとってだけではなく、クラス全体や学校全体にとっても学びや大切な気づきがそこにはきっとある。それに、色々起こるというのは成長の証でもあるから、どの子にも遅かれ早かれ何か問題が起きることはあるんだよね。だからお互い様。
何かあったら謝るという経験もさせてもらったら良いし、その度に担任やその他の教員に相談したり、保護者同士で話して考える良い機会にもなる。長い学校生活では大変なことも起きるけど、みんなの成長にもつながってるんだって信じて、子どもを見守り合っていこう。」
我が子の姿を12年間ともに見守ってくれる眼差しがある。そのことがとても心強く感じられた瞬間でした。また、子どもとの向き合い方や捉え方などさまざまに悩むことの多い私にとって、学校の講座や全学年連絡会(子どもたちの最近のようすなどを学年を越えて共有する会)など学びを得られる場があることもとてもありがたいです。
クラス替えがないからこそ、じっくり時間をかけて人間関係を築いていける。そこで育まれた世界への信頼を胸に、その先の人生を歩んでいけるように…。親同士もまた、心配や不安、そして喜びも共有し合いながら、子どもが安心して学べる環境であれたらと思います。
≪4年生保護者≫