NPO法人京田辺シュタイナー学校

成長を支える教室

 校舎や教室の空間は、無意識のうちに子どもたちに影響を与えていると私たちは考えています。そのため各教室も子どもの成長過程にふさわしい空間を意識して作られています。

■薄いピンク色の1・2年生…「一体感」—子どもを包みこむ


 1・2年の子どもたちは先生を前に見て授業を聴くよりも、先生の後ろ側でもいいのでそばにいて触れていたがるものです。彼らにとって世界と私はまだまだ「一体」のまま、いうなればパラダイスにいるような状態で、先生の愛情に包まれて過ごします。こうした時期の子どもたちには、円に近い形の教室がふさわしいのですが、現実的に可能な範囲で、子どもたちを包み込んでくれるような教室を目指しました。
 天井は、自然素材から作られた塗料を使って『薄いピンク色』に塗っています。周辺部を低くすることで、まどろみの中にいる子どもたちを包み込み、天井(天上)を身近なものにしています。

天井の角をなくし、あたたかい色調の1年生の教室

■オレンジ色の3・4年生…「世界からの独立」—内面的形成の始まり


 3年の頃、子どもたちは「9歳の危機」を迎えます。これまでひとつだった世界と私が分離をはじめ、世界から独立した「私」が意識され始めます。内面形成の始まりです。これまで一体であった世界から、この時期は「先生」が権威を持った存在として意識されはじめます。前も後ろもなかった教室の天井は、この学年で初めて「前」を持ちます。
 天井は、まどろみを包み込むピンク色ではなく、動きを持ち始めた『オレンジ色』に塗っています。

「前」が生まれる3年生の教室

■黄色の5・6年生…「地上に降りる」 —支える形


 5年生になって間もない子どもたちには、まだまだ子どもらしい幼さが目立っていますが、この1年で彼らの体は大きく成長していきます。1年生から4年生の教室は2階にありますが、5年生になるとはじめて1階に降ります。それまでの幼児らしさから抜け出して2階で過ごす小さな子どもたちを「支える」ことができるようになっています。
 この学年を覆う天井はほとんどフラットで、低学年の特徴だった「包み込む」要素は部屋の四角にわずかに添えてあるだけです。天井はこの頃のあり方を示すようにと『黄色』で塗っています。

「支える」フラットな天井の5年生の教室

■緑色の7・8年生…「新たな世界へ」—内部へ、かつ外部へ


 9歳以降に始まった世界との離別は、この時期に最後の段階を迎えます。自分というものを起点として、世界の物理的な広がりへと向かう一方、自らの内部への探求の旅が始まります。自立の最後の証として、1年から続いた担任の教員に反発し、乗り越え、8年間の導きに別れを告げます。
 空間も、包み込まれることを拒否し、「分断され、内部へ、外部へと流れ出す」意識に寄り添うような形状が相応しいのではないでしょうか。天井には、光の色である黄色と闇の色である青色が結合した色であり、シュタイナーが最も地上的な色と呼んだ『緑色』を塗っています。

分断し、内へ外へと流れ出す7年生の教室


■青色の9・10年生…「個人としての目覚め」—新たな調和への予感


 子どもたちは世界との一体的な関係から次第に目覚めていきます。そして9年生からは高等部が始まり、専門性の高い教科をそれぞれの教員が教えます。生徒はこれまでより独立した個人として授業に向かうことになります。この時期の教室の形状は7・8年生の教室の特徴であった外側へと流れ出す傾向を基調としながらも、世界との新たな調和を予感させる兆候を含めています。
 天井の色彩は1年生から始まった暖色から、7・8年生の緑色を経て、今度は『青色』へと変化します。

新たな調和への予感を感じさせる9年生の教室

■紫色(藤色)の11・12年生…「獲得した世界との一体感」—ダイナミックな世界

 大地へと降り立った魂は再び高みを目指し、最上級学年の教室はその旅の始まった場所である1・2年生の隣に位置します。この学年の天井は、1・2年生の教室に似た、包み込むような形状を持ちます。その一体感は、はじめから「与えられた」ものではなく、世界との分離を体験した上で自らの手で「獲得した」ものです。色は、11年は光と闇が地上的となった緑色とは違い、昇華するあり様で結合した『紫色(藤色)』を、12年生ではワインレッドに近い、『パープル』と呼ばれる本来の紫を塗っています。天井形状にはダイナミックな動きが加わり、11年生で獲得した調和を破って、新しい世界へ向かって、これから船出して行く姿を示すようでもあります。
 
 
 

11年生の教室。再獲得された世界との一体感に配慮している。

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